行川アイランド駅

私の旅のスタイルはアナログで、パソコンもスマートフォンもi-podも持って行きません。知りたいことや聞きたいことは観光案内所や地元の人に教えてもらいます。


したがって電車の中では車窓からの眺めを楽しむか、読書のみ。


房総半島ぐるり旅でも、そんな電車の過ごし方をしました。


ボックス席の窓からひとり海を眺めていたら、幼少時代の思い出がよみがえってきて、涙が溢れてきました。


千葉の海は、夏休みを家族で過ごした場所なのです。まだ若かった父や母の姿と、わがままだった自分の姿を思い出しました。すると電車が「行川アイランド」という無人駅に停車しました。


私にとって行川アイランドは、フラミンゴショーのイメージが強烈に残っていて、鳥たちが一斉に飛び立つ華麗な姿が、淡いオレンジ色の固まりとなっていまだ脳裏に残っています。


しかしこの施設はもう10年前に閉鎖され、廃墟となっていました。フラミンゴショーのときに父がやたらとシャッターを切っていて、写真をプリントしたときにはフラミンゴの写真ばっかりだったなと思い出しました。


当時まだ小さかった私は、フラミンゴショーに全然興味がなかったのですが、このショーを見ることになったのには訳がありました。


私が小さいころ、父は何でも私の希望をかなえてくれました。○○が欲しいと言えばすぐに買ってくれたし、△△へ行きたいと言えば次の休みには連れていってくれました。あるとき私は父に「気球に乗りたい」と言いました。行川アイランドで気球に乗れることを知り、早速日曜日に連れていってくれたのです。ところがその日、気球は天候の事情で飛ばず、私の希望はかないませんでした。でもせっかく遠くまで来たのだから、フラミンゴショーを見ようと父は提案しました。気球に乗れなかった理由からテンションの下がっていた私は、あまりおもしろくない気持ちのままショーを見ていました。ところが隣にいる父は、対照的に興奮していました。そんな父の姿を見て、子ども心にもわがままを言った自分を反省したのでした。


大人になった私は、父のように、子どもの願うことにはすべて応えてあげることができるのでしょうか。


そんなことを考えながら、電車に乗っていました。