呼ばれた。そしてつながった。

仕事で静岡県に出かけていました。


今日の自分はダメダメで、あらゆることが予定通りに進みませんでした。目指した山を途中で下りてきて、自分の不甲斐なさに落胆しながらトボトボと歩いていました。こんなときは亡き父にそっと八つ当たりをしてしまう、私。「パパ、どうにかしてよ…」


山を下りてから、取材先の日本そばの店に入りました。


古民家の蕎麦屋で、座敷でした。通された席は窓際で、広い庭に面しています。外を見てみると、たくさんの野鳥が餌や水をもらいにやってきていました。鳥の動きにしばらく見とれていました。


多くの鳥が集う庭は、まるで楽園のよう。そういえば昔、「いつか鳥を放して自由に飛び回れる庭にしたい」と父が言っていたことをふと思い出しました。もしかして父も、この庭を見たことがあるのかもしれないと直感的に感じました。


そんな時、蕎麦屋のおかみさんが他の客に「もう少し暖かくなると、ゴルフ帰りの人が多く立ち寄る」という話をしているのが聞こえてきました。間違いない、父もゴルフの帰りにこの庭を見たんだ。


店を出るとき、おかみさんにどこから来たのか聞かれたので千葉県ですと答えました。「千葉県のどこ?」「船橋です」「私は昔、中山競馬場の近くに住んでました。25年前までは法田の近くで○○庵という蕎麦屋をやってたんですよ」と。


これでつながりました。


○○庵は父と行った蕎麦屋。食通の父は「ここは鴨鍋がうまい」と言って鴨鍋を食べさせてくれました。まだ中学生だったけど、今でも鴨肉のおいしさを覚えています。


落ち込んでいる私を、父は楽園のような野鳥が飛び交う庭に案内してくれたのですね。